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2025.03.26

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXXI 「椿姫」大喝采のうちに閉幕

2000年の立ち上げから今年で四半世紀を迎えた小澤征爾音楽塾。ヴェルディ:歌劇「椿姫」オペラ・プロジェクトXXIの「椿姫」3月22日の東京公演をもって、ROHM CLASSIC SPECIAL─その25年の歴史の幕を下ろしました。たくさんの皆さまのご来場をありがとうございました。

これまで、オペラ・プロジェクトは21回、オーケストラ・プロジェクト/特別公演は6回を数え、国内のみならず、中国、台湾、韓国などアジア諸国でのオーディションによって選ばれた優秀な若い音楽家たちが、小澤征爾が絶大な信頼を寄せるサイトウ・キネン・ オーケストラのメンバーをはじめとする演奏家から指導を受け、その成果をオペラやオーケストラ公演で実践してまいりました。これまで音楽塾で学んだ塾生たちの数は約2,000人(オーケストラ、副指揮、合唱、カヴァーキャストを含む)にもおよび、その多くが音楽界の第一線で活躍しています。中には、コンクールで上位入賞を果たしソリストとして活動する者や、国内外のオーケストラでコンサートマスターや首席奏者として活躍する者も少なくありません。25年にわたり小澤征爾音楽塾は、音楽界を担う人材を育成する場としての役割を果たしてまいりました。これまでの活動への温かいご声援とご支援に心より感謝申し上げます。

この夏も例年通り小澤征爾音楽塾オーケストラはセイジ・オザワ 松本フェスティバルでの「子どものためのオペラ」や「子どものための音楽会」などに出演いたします。小澤征爾音楽塾の今後の活動については、皆さまに改めてお知らせいたします。
これからも、小澤征爾音楽塾への温かいご支援とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

小澤征爾音楽塾

 

小澤征爾音楽塾副塾長 原田禎夫 メッセージ

 昨年2月、小澤さんが亡くなられた、という知らせを受けて1ヶ月も経たないうちに「コジ・ファン・トゥッテ」のリハーサルが始まりました。小澤征爾という大きな大きな存在をとうとう失ってしまった、という何とも言えぬ寂しさで、心に大きな穴が開いたままでした。小澤さんが教育プロジェクトを立ち上げられて20年以上の積み重ねから、コーチ陣、スタッフ、皆が何をどうすれば良いものを目指せるか、という事は分かっていましたが、抱えている寂しさのやり場に困るばかりでした。けれども誰もがその寂しさに蓋をして頑張った、そして素晴らしい拍手と共に最後の公演の幕が降りた時、「小澤さん、見てますか、聴こえましたか?」と皆で成果を分かち合いました。
 僕はいわゆるソーシャルメディアからは遠ざかって生きている人間ですが、世界中に散らばった小澤塾の沢山の卒業生たち(もちろん奥志賀、スイス・アカデミーも含め)が年代、国籍を問わず、小澤さんとの思い出、経験などを共有し、お互いを励まし合っている事を知りました。スクーターに乗って、たったひとりで世界に飛び出して行った小澤さんが切り開いてきた世界がここにある、塾をずっと続けてきた意味がここにもある、と実感しました。
 そしてこの1年は、小澤さんの蒔いた種、教育プログラムをどのようにして続けて行かれるか、というテーマのもと、準備を進めて来ました。
 ローム ミュージック ファンデーションという大きな後ろ盾があったおかげで、学生たちに最高レベルのオペラを経験させたいという、世界中のどこにも存在しないプロジェクトがこんなにも長く続けて来られました。絶大なサポートに心からお礼を申し上げます。
 小澤さんが何の為に教育に力を注いで来られたのか、その精神と情熱を継受して行く事が我々の使命だと思っています。今後とも皆様の若い人たちへの応援をよろしくお願い申し上げます。

 

小澤征爾音楽塾アシスティング・ディレクター 小澤征良 メッセージ

 私が今世で知っている人間のなかで、間違いなく父は、世界一のGIVERです。自分のエネルギー、時間、気持ちを惜しみなく、いつも、いつも誰かのためにあげる人です。60年以上前に一人貨物船で渡った欧米で、いろんな苦労と時間を通じて得たものを、若い音楽家たちへ渡したい、たくさんの「本当に大事なこと」を、一人でも多くの若者たちのこころへ届けたい—その父の情熱が、故佐藤研一郎さんのオペラを愛する情熱と共鳴して、小澤征爾音楽塾は2000年に生まれました。
 当時、***アカデミーといったような名前を考えていた父に、がんとして強く「小澤征爾音楽塾」がいい、と、佐藤研一郎さんが命名してくださいました。歌劇というひとつの世界観を4週間かけて創り上げる「オペラ」制作現場を通じて、日本はもちろんのこと中国、韓国や台湾などから厳しいオーディションに受かった塾生たちが、彼らの音楽家人生でかけがえのない核になってゆく大事なものを培っていく様は、ここ以外では見られない光景です。音楽学校でも、留学でも得られない体験—それを胸に、2000年から四半世紀、一千人を超える塾生たちが今日この瞬間も、ヨーロッパやアジアやアメリカ各地でのオーケストラの首席を務めたりソリストになったりして活躍しています。感動するのは世界へ飛び出してゆく彼らが実に固い絆で結ばれており、塾体験後もずっと世界中で連絡を取り合い、手を取り合っていることです。彼らはまさに父やSKOメンバーのコーチたちの思いを譲り受けた「音楽の家族」たちで、このような奇跡の種を世界中へ蒔き咲かせてくださっているローム ミュージック ファンデーション、そしてローム株式会社のみなさまの大きな支援のおかげです。改めまして四半世紀ものご支援にこころからお礼を申し上げます。
 先日も韓国人女性音楽家で現在は欧州のオーケストラでコンマスとして活躍する元塾生から気持ちのこもった手紙をいただきました。塾で学んだことは間違いなく今の自分を形成していて一人でも多くの若者たちに同じ体験をしてほしい、だから自分は今の場所から小澤征爾音楽塾の素晴らしさを発信し続ける、とありました。素晴らしいものだからこそ分かち合いたい、父のGIVINGなスピリットも脈々と受け継がれていることに心が震えました。これからもこの特別な場所—小澤征爾音楽塾をどうぞよろしくお願いいたします。

 
小澤征爾音楽塾のあゆみ>>>
 

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