photo
ニュース
2023.12.29

【連載】「小澤征爾音楽塾のオペラができるまで」

「小澤征爾音楽塾」の舞台裏に迫るWEB連載「小澤征爾音楽塾のオペラができるまで」がスタートします。オーディションを経て選ばれた、プロを目指す若手音楽家が、一流のキャストやスタッフと共に集中的に「オペラをつくる」というこの世界でも稀に見るプロジェクト。これまでに1500名以上(オーケストラ、合唱、カヴァーキャストを含む)の若手音楽家が学び、国内外で幅広く活躍しています。そんなプロジェクトの舞台裏に、音楽ライターの宮本明さんが迫ります。連載開始にあたり、以下、本プロジェクトプロデューサーによるイントロダクションです。


小澤征爾音楽塾はオペラを題材とする教育プロジェクトで、ローム株式会社の佐藤研一郎社長(当時)と小澤征爾が、今から23年前、2000年に立ち上げました。オーケストラを日本、中国、台湾、韓国でのオーディションによって選ばれた若い優秀な音楽家たちで組織し、小澤征爾塾長と2022年から首席指揮者に就任したディエゴ・マテウス、そしてサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーを中心とする音楽家が実践的な指導を行い、世界のオペラハウスで活躍する歌手や演出家とともにオペラ公演を創り上げています。
なぜオペラなのか。小澤塾長はその意図を、2000年の第1回目の公演のときにこう記しています。

「今の日本、それにアジアの若い音楽家の水準向上は、私にとって嬉しい驚きで、この素晴らしい若い音楽家に、私の今まで生きてきた音楽経験をぶつけようと考えました。
これが私の考えた“小澤征爾音楽塾”の第一歩です。そして初の試みとして今年から3年にわたり彼らと共にオペラを制作し公演を実施します。
何故、オペラなのか。それは、私が音楽をする上でシンフォニーとオペラが車の両輪だと考えているからです。ドラマの進行に従って、感情の起伏があり、それに音楽がピッタリついているオペラほど、音楽の表現方法を勉強するのに理想的なものはありません」

2000年小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅠ モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」公式プログラムより抜粋

 

3年が20年となり、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトは今回で20回目を数えます。音楽塾の特徴は、オーケストラピットには若い音楽家によるオーケストラ、舞台の上には一流の歌手と演出を揃えていることです。この組み合わせのオペラ公演は世界でも類を見ないものです。これからプロを目指すフレッシュな若い音楽家と、世界一流の歌手たち。良い意味でのアマチュアリズムと、プロフェッショナルの技術と経験との融合がそこには見られます。「あえて」のこの組み合わせが音楽塾の特徴です。
それからもうひとつの特徴が、小澤征爾塾長を筆頭にディエゴ・マテウス、サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーが若い音楽家の指導に当たっていることです。指導というと一方的に教えるイメージがあるかもしれませんが、小澤塾長は「音楽経験をぶつける」と表現しています。指導を受ける塾生だけでなく、指揮者もコーチも世界から集まる歌手たちも、オペラのリハーサルと公演を通じて、一流の音楽経験のぶつかり合いから何かを摑んでいるように見えます。小澤征爾塾長の姿勢がまさにこれで、たとえば、リハーサルの過程で、コーチ陣や歌手たちに、それも特定の何人かにだけではなく、多くの人に意見を求める場面が印象に残っています。それは彼らを尊重する姿勢であると同時に、皆の経験と知識を塾長自らが吸収しているかのようです。
これが小澤征爾音楽塾で行われていることです。「教えることは学ぶこと」。20年以上続けた音楽塾では、初期の塾生がコーチとして戻ってくるケースも出てきました。
音楽の表現方法とは何なのでしょう? 技術だけではない何か、生き生きとした良き音楽を求める姿勢がここにはあります。

そしてその姿勢は出演者だけではなくスタッフにも伝わるものです。私が初めて舞台監督助手として関わったオペラの現場仕事、それが小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅠ「フィガロの結婚」でした。

今回、「コジ・ファン・トゥッテ」の幕が開くまでを(そして開いてからも)、音楽ライターの宮本明さんにレポートしてもらいます。オペラは人間のドラマ。実は、その幕が開くまでの舞台裏にも、オペラのような人間のドラマがあります。そこに何かしら皆さんにとって興味深いドラマが含まれていることを願っています、そしてぜひ、劇場にいらしていただけることを。

深町 達(小澤征爾音楽塾 プロデューサー )

写真は、2023年3月 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIX プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」最終リハーサル終了後、ロームシアター京都にて


【連載】「小澤征爾音楽塾のオペラができるまで」
イントロダクション,,

/