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2024.03.10

【連載⑨】「小澤征爾音楽塾のオペラができるまで」:塾オケリハーサル 5日目─カヴァー・キャストとの初合わせ

WEB連載「小澤征爾音楽塾のオペラができるまで」では、3月15日にロームシアター京都で初日を迎える「コジ・ファン・トゥッテ」の幕が開くまで(そして開いてからも)をレポート。第9回は、3月5日(火)の小澤征爾音楽塾オーケストラ リハーサル5日目のカヴァー・キャストとの初合わせの模様から。


宮本 明(音楽ライター )

オーケストラ・リハーサル4日目は自分のスケジュールの都合で残念ながら見ることができなかったので、一日サボって5日目。東京でのオーケストラ・リハーサルの最終日だ。

この日はカバー・キャストの歌手たちも参加した。京都での初日開幕へ向け、すでに現地に入ってリハーサルを重ねている彼ら。オーケストラのためにいったん東京に戻ってきた。リハーサルとはいえ、“乗り打ち”。長距離移動してすぐに歌うのはコンディション的に大変だと思う。でも売り出し中の注目の実力派歌手陣。そんな不安は感じさせない。高野百合絵(フィオルディリージ/ソプラノ)、十合翔子(ドラベッラ️/メゾソプラノ)、西山詩苑(フェランド/テノール)、市川宥一郎(グリエルモ/バリトン)、中川郁文(デスピーナ/ソプラノ)、井出壮志朗(ドン・アルフォンソ/バリトン)の6人は、数日間ご無沙汰していたあいだにチームワークもより親密になったのでは?という気持ちいい歌唱。アリアはもちろん、重唱のアンサンブルもすっかり手のうちに入っている感じで自由自在。とても楽しい。
それに乗せられるように、オーケストラもいきいきしてきた気がする。たとえば序曲。駆け回るような8分音符のパッセージのわくわく感。その間に何度も挿入される総奏のシンコペーションにも前に進むエネルギーを感じる。なにより、各自の演奏している姿がアグレッシブになってきた。まだ数日間とはいえ、現時点で彼らが獲得した練習の成果が現れているのだろう。もちろん、まだまだ先へ行くはず。練習中にマテウスが言った。「モーツァルトが素晴らしいのは、シンプルだけれど、つねに何かやるべきことがある(always somthing to do)」。そのやるべきことをひとつひとつ丁寧にやっていくだけだ。

日を追うごとに、練習中のマテウスの指示に日本語が混ざるようになってきた。使用頻度の高いのは「モーイッカイ!(もう一回)」。ときどき、「“モーイッカイ”と“モーイチド(もう一度)”。どっち?」とか「モー? モオ?」とか、習得した言葉の確認にも余念がない。メンバーに「Tutti! は何?」と聞いて、さっそく「イッショニ!」と使ったりもしている。結構お上手です。
「もう一回」に関連して、日本語ではないがもうひとネタ。同じ箇所を何度か繰り返して「これで最後ね(だからしっかり弾いてくださいよ)」と言う時。
「Last time! ……(間)……maybe.」(最後です!……たぶん)」。
お気に入りのフレーズのようで、けっこう多用するのが微笑ましい。


【連載】「小澤征爾音楽塾のオペラができるまで」
イントロダクション
#1
#2 オーディションに挑む若き音楽家たち─音楽塾の“主役”、塾生オーケストラ
#3 小澤征爾音楽塾展2024
#4 歌手リハーサル開始!
#5 塾オケリハーサル初日
#6 塾オケリハーサル 2日目─楽器ごとの分奏
#7 小澤征爾音楽塾合唱団─根本卓也さん(合唱指揮)インタビュー
#8 塾オケリハーサル 3日目─弦楽パートのリハーサル
#9 塾オケリハーサル 5日目─カヴァー・キャストとの初合わせ
#10 小澤征爾音楽塾展2024─小澤征爾塾長のスコア
#11 京都リハーサル初日
#12 バックステージツアー
#13 原田禎夫副塾長のスピーチ
#14「子どものためのオペラ」とメインキャストのリハーサル
#15「子どものためのオペラ」楽器紹介編
#16 ゲネプロ
#17 元塾生・大宮臨太郎さん(NHK交響楽団 第2ヴァイオリン首席奏者/サイトウ・キネン・オーケストラ ヴァイオリン奏者)インタビュー
#18 原田禎夫副塾長インタビュー
#19 カヴァー・キャスト 中川郁文さん(ソプラノ)と井出壮志朗さん(バリトン)インタビュー
#20 本番
#21 首席指揮者 ディエゴ・マテウス インタビュー

 

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